日本の労働生産性 (2018年03月)
世界と比べた日本の労働生産性水準(「労働生産性の国際比較2017年版」より)
こんにちは、社会保険労務士の中山です。
今回のお役立ち情報は、外国と比較した日本の労働生産性についてご紹介します。
「日本の労働生産性は、主要先進7か国で最下位」という内容なのですが、皆様いかがでしょう。「日本人は勤勉で、最終的な結果よりも途中の過程(努力したか等)を重んじる国民性、決して労働生産性は高くはないだろうな」というのが私の考えでしたが、まさかここまで低いとは思いませんでした。そんな調査結果をお伝えします。
◆平成29年12月の調査結果
「労働生産性の国際比較2017年版」(公益財団法人 日本生産性本部)が平成29年12月20日に出されました。
政府が生産性向上に向けた各種の施策を展開している中で、日本の労働生産性が国際的にみてどのあたりに位置しているのかを、調査結果で明らかにしています。
◆そもそも「労働生産性」とは?
労働生産性とは、「労働者1人当たりで生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したもの」です。
労働生産性は、「付加価値額または生産量÷労働投入量(労働者数または労働者数×労働時間)」で表され、労働者の能力向上や経営効率の改善などによって、労働生産性は向上します。
◆日本の時間当たり労働生産性は20位
平成28年の日本の時間当たり労働生産性は46ドル(4,694円/購買力平価換算)。順位はOECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中、昨年と同様の20位となりました。
上位は、1位アイルランド(95.8ドル)、2位ルクセンブルク(95.4ドル)、3位ノルウェー(78.7ドル)と続いています。OECDの平均は51.9ドルです。
日本の労働生産性は、6位の米国(69.6ドル)の3分の2程度の水準で、主要先進7カ国(フランス、米国、ドイツ、イタリア、カナダ、英国、日本)でみると、最下位の状況が続いています。
◆日本の1人当たり労働生産性は21位
平成28年の日本の就業者1人当たりでみた日本の労働生産性は、81,777ドル(834万円/購買力平価換算)。順位は、OECD加盟35カ国中21位となりました。
上位は、1位アイルランド(168,724ドル)、2位ルクセンブルク(144,273ドル)、3位米国(122,986ドル)となっています。OECDの平均は92,753ドルです。
日本の労働生産性は、就業1時間当たりと同様、就業者1人当たりでみても、主要先進7カ国で最も低い水準となっています。
◆日本の製造業の労働生産性は?
日本の製造業の労働生産性(就業者1人当たり)は95,063ドル(1,066万円/為替レート換算)。日本の順位は14位で、米国(139,686ドル)の7割程度の水準となっています。
との調査結果です。労働生産性を高め強い企業となる為、時間外労働を減らしワークライフバランスを確立していく為にも、企業は今後の働き方の改革が必要になると思います。お付き合い残業、無駄な長時間の会議等を減らしていくことは勿論ですが、業務内容を再度見直し、無駄な業務、非効率な業務は、一層のことやめてしまうというのも一つの手かもしれません。
総務サポート社労士事務所
中山 淳
AIの影響 (2018年02月)
『AI』進出により減少する仕事、増加する仕事とは?
こんにちは、社会保険労務士の中山です。
今回のお役立ち情報は、『AI』進出による仕事の変化についてご紹介します。
仕事を探す際に重要視することは「賃金」「労働時間」「社風」「ワークライフバランス」・・・等様々なものがありますが、少なからず「仕事の将来性」というものもその中にあると思います。その「仕事の将来性」について、急速な『AI』の進展により、今後益々変化していくことが予想されます。「今後10~20年で、今存在する様々な仕事が自動化され、人間の仕事ではなくなる」そんな言葉もあります。将来、『AI』に取って代わられることのない仕事、能力とはどのようなものなのでしょう。
◆厚労省の部会で議論がスタート
平成29年12月初旬に開催された厚生労働省の労働政策審議会(労働政策基本部会)では、「技術革新(AI等)の動向と労働への影響」をテーマに議論がスタートしましたが、ホームページ上で公開された資料の中から「AI導入による仕事への影響」を考えてみます。
◆求められるは『AI』にはできない仕事
厚生労働省のホームページで公開された資料の中で、シンクタンクや各省庁等による先行研究の内容がまとめられています。
『AI』等で代替可能性の高い(今後減少する)仕事、代替可能性の低い(今後増加する)仕事の例として、以下のものが挙げられています。
【代替可能性の高い(今後減少する)仕事の例】
・必ずしも特別の知識やスキルが求められない職業
・バックオフィス等、従来型のミドルスキルのホワイトカラーの仕事
・ルーティンタスク
・ホワイトカラーの仕事
・定型的業務が中心の職種
・教育水準や所得水準が低い労働者の仕事
【代替可能性の低い(今後増加する)仕事の例】
・他者との協調や他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業
・上流工程やIT業務における、ミドルスキル・ハイスキルの仕事
・人が直接対応することが質や価値の向上につながるサービスに係る仕事
・新しい付加価値の創出に役立つ技術職
◆今後は必要な取組みとは?
ビジネスパーソンにとって今後は、「AIを使いこなす能力」や「AIに代替されにくいコミュニケーション能力」を向上するための取組みが必要になってくると言えるでしょう。
総務サポート社労士事務所
中山 淳
職業安定法改正 (2017年12月)
平成30年1月からの労働者の募集や求人申込みの制度変更とは?
こんにちは、社会保険労務士の中山です。
今回のお役立ち情報は、平成30年1月1日から施行される、職業安定法の一部の改正を含む「雇用保険法等の一部を改正する法律」、労働者の募集や求人申込みの制度の主な変更点についてご紹介します。
そもそも、労働契約も一種の「契約」です。契約には「売買契約」「業務委託契約」など様々なものがあり、会社が他社と契約と締結する場合には、契約条件を明確にし、法的に合致した契約書を作成し、丁寧に契約を結んでいるものと思います。
「労働契約」もこれと同じです。会社と労働者が、互いに労働条件について合意し、はじめて労働契約が成り立ちます。会社には、その際、労働条件について書面で明示しなければいけないという義務もあります。
「労働条件の明示」という観点から、以下のような改正が行われます。
◆労働条件の明示について
ハローワーク等へ求人申込みをする際や、ホームページ等で労働者の募集を行う場合は、労働契約締結までの間、業務内容や契約期間、就業時間、賃金といった労働条件を明示することが必要ですが、今回の改正で、当初の労働条件に変更があった場合、その確定後、「可能な限り速やかに」、変更内容について明示しなければならなくなりました。
面接等の過程で労働条件に変更があった場合は、速やかに求職者に知らせるよう配慮が必要になります。
◆最低限明示しなければならない労働条件等
労働者の募集や求人申込みの際には、書面の交付によって明示しなければならない労働条件が定められていますが、今回の改正で、「試用期間」、「裁量労働制(採用している場合)」、「固定残業代(採用している場合)」、「募集者の氏名または名称」、「雇用形態(派遣労働者として雇用する場合」)の明示が追加事項とされました。
◆変更明示の方法
以下のような場合には、変更の明示が必要となりました。
(1)「当初の明示」と異なる内容の労働条件を提示する場合
例)当初:基本給30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月
(2)「当初の明示」の範囲内で特定された労働条件を提示する場合
例)当初:基本給25万円~30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月
(3)「当初の明示」で明示していた労働条件を削除する場合
例)当初:基本給25万円/月、営業手当3万円/月 ⇒ 基本給25万円/月
(4)「当初の明示」で明示していなかった労働条件を新たに提示する場合
例)当初:基本給25万円/月 ⇒ 基本給25万円/月、営業手当3万円/月
なお、変更内容の明示については、「変更前と変更後の内容が対照できる書面を交付する」、「労働条件通知書において変更された事項に下線を引いたり着色したり脚注を付けたりする」など、求職者が変更内容を適切に理解できるような方法で行う必要があります。
以上が改正点です。「自分の労働条件・待遇を正確に理解し、それに納得して働いてもらう」会社にとっても、労働者にとっても大切なことです。
総務サポート社労士事務所
中山 淳